居抜き物件の基礎から選び方までを丁寧に解説
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居抜きとは?脚光を浴び始めた背景を探る

店舗やオフィスを構える際、居抜き物件で開業するという選択肢があります。

居抜きとは、これまで営業していた店舗やオフィスの内装を、元の何もないスケルトン状態に戻すことなく、場合によっては設備や什器なども残したまま、前のオーナーから引き継ぐことです。内装や設備などにかかる費用を削減でき、少ない投資でお店を持つことができます。

居抜きとは?

飲食店などに多く見られますが、最近では美容室やオフィス、歯科医院をはじめとするクリニックなどでも居抜き物件を目にするようになりました。

この記事では居抜きの特徴と、脚光を浴び始めた背景について説明します。

居抜きは昔からあったのか?

実は「居抜き」は昔からメジャーなものではなく、ここ10数年の間に一気に広がったスタイルです。

居抜きの中でも特に流通量の多い飲食店は、外食産業が1997年にピークを迎えた後、店舗数・売り上げともに下降の一途をたどってきました。バブル崩壊後の長引く不況や震災の影響などにより、それまであった多くの飲食店が次々と閉店に追い込まれました。

通常、店舗向けの賃貸物件の契約には「原状回復」という条件がついています。原状回復とは、賃貸契約を解約する際、借主が物件を借りたあとに施した内装や、搬入・設置した設備を取り除き、物件を借りた時の状態に戻すことを意味します。

しかし、最後まで経営を続けるために金策に駆け回っていた借主の中には、原状回復にかかる費用を支払えない人も少なくありませんでした。

そこで登場したのが、これまで使用していた店舗の内装や設備をそのまま引き継ぐ「居抜き」というスタイルです。

閉店する店主にとっては、不要になる設備などを一括して売却・譲渡することができ、新しい借主にとっては、開店時に最も費用のかかる内装や設備を格安で手に入れられる、理想的なスタイルだと考えられ、一気に需要が高まりました。

居抜き物件が爆発的に増えた背景

居抜き物件が出始めた頃までは、閉店情報は、店に出入りしていた卸業者や中古の厨房機器を取り扱う会社などの口づてに、限られた人たちの間で広まっていました。

しかし、需要の高まりによって、それまで閉鎖的だった不動産業界で居抜き物件の情報は爆発的に広がるようになりました。居抜き専門の仲介業者が新しく出現したことや、不動産の情報がインターネット上で流通するようになったことが大きな要因です。

また、不況によって人々の価値観が変化したことも、居抜きが増えた理由のひとつです。

それまで新しく開業する時は、何もない状態の物件に内装を施し、新しい設備を設置するのが一般的でした。以前の内装や設備を使うのは「貧乏くさい・ケチくさい」といったイメージがつきまとっていました。

しかし、新品が当たり前だとされてきた人々の意識に、エコロジーやシェアリングといった「もの」を大切にする概念が持ちこまれ、住宅のリノベーションのように、古いものに付加価値を与えることにより、新品以上の価値が認められるものも出てきました。

そういった流れの中で、居抜きに対するイメージも一新されました。中には、いかにしてひどい物件をアイデアと技術で人気店に押し上げたかという、「施工前・施工後」をテーマにしたテレビ番組などが話題となって集客力を高めた飲食店もあります。

新しくて綺麗なお店ではなく、お金をかけずに個性豊かなお店を創り出したことに価値が見出されるようになったことは、居抜きに対する抵抗感がなくなった理由のひとつです。

開業ハードルを大きく下げた居抜き

価値観の変化に後押しされながらも、居抜きの需要が激増した最大の理由は、開業費用が安く抑えられることです。

新規で開業する場合、改装や設備には初期費用の60%前後を占める大きな負担がかかっていました。また、内装工事にはかなりの日数を要するため、その間に発生するカラ家賃やカラ人件費なども、開業への高いハードルとなっていました。

このため、個人で開業するのは、資金にかなりの余裕がある人でなければ難しいと考えられてきました。

しかし、居抜きという選択肢が増えたことで、これまでは自分のお店やオフィスを持つことをあきらめていた人にも、開業の可能性が広がりました。

内装や設備にかかる費用が抑えられるだけでなく、工事の手間も省けるため、物件の契約から開業までの期間も短くなりました。

決して景気がよくない状態にあっても、毎年多くの飲食店が出店しているのには、このように今まで資金不足で可能性がなかった人も居抜きであれば開業できるようになったことが背景にあります。

費用を安く抑えられる半面、トラブルも…

費用の安さによって需要が高まった居抜きですが、新しい分野であるだけに、これまでは目立つことのなかった問題が発生するようになりました。

新品の状態で使用開始するスケルトンと違って、それまで何年か使用してきた設備には、様々な不具合が生じるようになったのです。代表的なものは、給水・排水などの水回りや、換気など空気の流れに関する不具合、設備が正常に作動しないなどのトラブルです。

また、これまでの店舗の構造や内装をそのまま引き継ぐため、居抜きでは新しいお店のコンセプトに合わせた店づくりが難しいという問題もあります。内装を変更するのに、スケルトン状態から内装を施すよりも費用がかかるケースさえあります。

安いからという理由だけで居抜き物件を契約し、前の店舗にあまり手を加えずに開業したお店は、以前の「潰れた店」のイメージがつきまとい、うまく軌道に乗せることが難しいこともあります。

居抜きは費用を安く抑えられる反面、様々なトラブルの可能性を抱えています。契約した後から発生する問題も少なくありません。安いことには理由があると心得て、契約前にできる限り細かく調査し、後からトラブルにならないように注意しましょう。

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